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名古屋高等裁判所 昭和46年(ネ)596号 判決 1972年2月14日

控訴人(原告) 中屋久憲

被控訴人(被告) 株式会社中央相互銀行

右訴訟代理人弁護士 谷幹一

同 小川剛

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠関係は控訴人において左のとおり附加陳述したほか原判決事実摘示記載のとおりであるから、その記載を引用する。

控訴人は、「本件合併契約書承認決議にあたり、契約書三条、四条、八条等は商法二七五条の会計に関する事項として監査役の意見報告を必要とするものであり、右意見報告を欠いた本件臨時総会決議は決議の方法にかしがあり取消さるべきである。」と述べた。

理由

控訴人主張事実については当事者間争いない。

そこで判断するに、先ず本件臨時株主総会決議は商法三四二条に違反するかしがあるとの主張については当裁判所もその理由がないものと判断する。その理由は左に附加するほか原審の判断と同様であるから、原判決理由説示中一、(二)の記載を引用する。なお附言すれば、被控訴人会社株主に対する本件臨時株主総会通知書にはたんに定款変更の件として、「定款第二一条第二、三項は削除する」とのみ記載してある。成立に争のない甲第一号証の一、二によれば右通知書添付参考資料中には、第二号議案定款変更の件と題して、変更の趣旨および目的についての記述とともに現行定款第二一条第一、二、三項の全文が併記されており、これらの記載部分と相俟って前記通知書中の記載は、本件臨時総会における定款変更に関する要領としては十分尽されているものと解することができ、この点からみても控訴人の主張が理由のないこと明らかである。

本件臨時総会決議にあたり本件合併契約書中、発行新株総数、合併比率に関する事項(合併契約書三条)、増加すべき資本金の額および準備金に関する事項(同四条)、合併交付金に関する事項(同八条)の各部分について監査役の意見報告がなかったことは右総会決議の方法に法令違反があると控訴人は主張する。そもそも株主総会決議の方法のかしとは、例えば商法二三九条、二四〇条、二四一条等主として決議の成立手続に関するかしを指称するものである。これを本件についてみると、本件臨時総会決議にあたり合併契約書中控訴人主張の部分について監査役の意見報告を欠くことは右決議の方法にかしがあるものとは解せられない。したがって監査役の右意見報告を欠くことは決議取消原因となる決議方法のかしがあったということはできない。

また、かりに右事由が決議取消事由に該り、かつ本件合併契約書中三条、四条、八条等に控訴人会社の会計に関する事項が含まれているとしても右事項は商法二七五条にいう計算書類に該当しないものというべくその理由は原審判断と同様であるから原判決理由説示中(三)の記載部分をここに引用する。

かくて控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当として維持すべく、本件控訴は失当として棄却すべきである。そこで控訴費用は控訴人に負担させることにして主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西川正世 裁判官 丸山武夫 山田義光)

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